【完全ガイド】美容室経理、はじめての従業員雇用で必要な手続きと流れを徹底解説

美容室で初めて従業員を雇うオーナー様へ。必要な手続きの多さや経理の複雑さに、不安を感じていませんか?本記事を読めば、雇用前の準備から労働・社会保険、税務の各種届出、毎月の給与計算まで、やるべきことの全手順がわかります。結論として、手続きは多岐にわたりますが、このガイドに沿って進めれば漏れなく対応可能です。安心して新たな仲間を迎え入れ、事業をスムーズに拡大させましょう。
1. はじめての従業員雇用 美容室オーナーが最初に知るべきこと
アシスタントやスタイリストなど、初めて従業員を雇用することは、美容室の成長にとって大きな一歩です。しかし、オーナー一人の個人事業主として運営してきた状況とは異なり、新たな責任と多くの手続きが発生します。この章では、まず従業員を雇うことで何が変わり、どのような手続きが待っているのか、その全体像を把握していきましょう。

1.1 従業員を雇うと何が変わるのか
従業員を一人でも雇用すると、あなたは「事業主」であると同時に「使用者」としての法的な立場になります。これにより、これまでになかった様々な義務が生じます。単に人手が増えるだけでなく、労働法規を遵守し、従業員の労働環境を整える責任が生じることを最初に理解しておくことが重要です。具体的には、主に以下の3つの大きな変化があります。
1. 労働保険・社会保険への加入義務
従業員を雇用する場合、原則として労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられます。これらの保険料は、事業主と従業員がそれぞれ負担します。
2. 給与計算と源泉徴収の義務
毎月、従業員の給与を計算し、所得税や住民税、社会保険料などを天引き(源泉徴収)して、国や自治体に納付する義務が発生します。
3. 労働基準法の遵守義務
労働時間、休日、休憩、有給休暇など、労働基準法で定められたルールを守る必要があります。従業員とのトラブルを未然に防ぐためにも、法律に基づいた労務管理が不可欠です。
1.2 美容室の従業員雇用 手続きの全体像とタイムライン
従業員を雇用する際の手続きは、多岐にわたり、それぞれ提出先や期限が異なります。どのタイミングで何をすべきかを事前に把握し、計画的に準備を進めることが、スムーズな雇用の鍵となります。手続きの全体像は、大きく分けて「雇用前」「雇用時」「雇用後」の3つのフェーズに分かれます。
【雇用前】採用決定まで
- 労働条件(給与、労働時間、休日など)の決定
- 求人募集・面接・採用の決定
- 雇用契約書の作成と準備
【雇用時】入社手続き
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続き(労働基準監督署、ハローワーク)
- 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入手続き(年金事務所)
- 税金に関する届出(税務署)
【雇用後】毎月・毎年の業務
- 毎月の給与計算と給与明細の発行
- 源泉所得税・住民税の納付
- 年に一度の年末調整
- 年に一度の労働保険料の申告・納付(年度更新)
- 年に一度の社会保険料の見直し(算定基礎届)
これらの手続きには、それぞれ専門的な知識が必要です。次の章から、各ステップで必要な手続きや書類について、具体的に詳しく解説していきます。

2. ステップ1 従業員を雇用する前の準備
従業員を一人でも雇用するということは、個人事業主から「事業主」としての責任を負う立場になることを意味します。手続きの前に、まずは従業員を迎え入れるための基盤を整えることが不可欠です。ここでの準備が、後の労務トラブルを未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境づくりの第一歩となります。
2.1 労働条件を明確に決める
従業員を募集する前に、どのような条件で働いてもらうのかを具体的に決定しておく必要があります。ここで決めた内容は、求人票や雇用契約書に記載する重要な情報となります。曖昧な点を残さず、労働基準法などの法律に準拠した内容を定めましょう。

2.1.1 給与と労働時間
給与は、従業員の生活を支える最も重要な要素です。各都道府県で定められている「最低賃金」を必ず確認し、それを下回る金額を設定することは法律で禁じられています。基本給のほか、スタイリスト向けの歩合給、アシスタントの技術手当、役職手当、残業手当、通勤手当など、美容室の運営方針に合わせた給与体系を構築しましょう。
労働時間は、原則として1日8時間、週40時間という法定労働時間が上限です。休憩時間は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上を勤務時間の途中に与える義務があります。美容室の営業実態に合わせて、1ヶ月単位の変形労働時間制などを採用することも可能です。
2.1.2 休日と休暇
休日は、法律で定められた法定休日(毎週1日以上または4週間を通じて4日以上)を必ず設ける必要があります。美容室で一般的な月曜定休に加えて、公休を設けるなど、従業員がリフレッシュできる休日設定が求められます。
休暇については、年次有給休暇が代表的です。雇い入れから6ヶ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した従業員には、10日間の有給休暇を付与する義務があります。その他、慶弔休暇や産前産後休業、育児休業などの制度についても定めておくと、より働きやすい環境が整います。
2.2 募集から採用決定までの流れ
労働条件が固まったら、次はいよいよ従業員の募集を開始します。一般的な流れは以下の通りです。
まず、ハローワーク(公共職業安定所)や美容業界専門の求人サイト、求人情報誌などを活用して求人情報を公開します。応募があったら、履歴書や職務経歴書による書類選考を行い、通過者と面接を実施します。面接では、技術力や接客スキル、人柄などを確認しますが、本籍地や宗教、支持政党など、業務に関係のない差別につながる質問はしてはいけません。面接を経て採用したい人材が決まったら、内定通知を出し、入社日などを調整して採用決定となります。
2.3 トラブル防止の要 雇用契約書の作成
採用が決まったら、必ず「雇用契約書」を作成し、従業員と取り交わしましょう。労働条件については「労働条件通知書」を交付する義務がありますが、後々の「言った・言わない」というトラブルを防ぐため、双方が合意した証として残る雇用契約書を作成し、署名・捺印のうえで各自1部ずつ保管することが鉄則です。
雇用契約書には、契約期間、就業場所、業務内容、始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項などを明記する必要があります。ひな形はインターネットでも入手できますが、自店の労働条件に合わせてカスタマイズし、不安な点があれば社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

3. ステップ2 従業員雇用時に必須の行政手続き
従業員を一人でも雇用すると、オーナーは事業主として国に対して様々な手続きを行う義務が生じます。これらの手続きは、従業員の権利を守り、適正な事業運営を行うために不可欠です。主に「労働保険」「社会保険」「税金」の3つのカテゴリーに分かれており、それぞれ提出先や期限が異なります。ここでは、美容室オーナーが従業員を雇用した際に必須となる行政手続きを、順を追って具体的に解説します。

3.1 労働保険に関する手続き
労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」の総称です。従業員を一人でも雇用した事業主は、原則として労働保険の加入手続きを行わなければなりません。パートやアルバイトであっても、条件を満たせば加入対象となります。
3.1.1 労働基準監督署への届出
まず、従業員の業務中や通勤中のケガなどに備える「労災保険」の手続きから始めます。これは事業所を管轄する労働基準監督署で行います。
労働保険関係成立届
これは、労働保険の適用事業所となったことを届け出るための書類です。従業員を雇用した日(保険関係が成立した日)の翌日から10日以内に、所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。非常に期限が短いため、雇用が決まったら速やかに準備を進めましょう。あわせて、その年度の労働保険料を概算で申告・納付する「労働保険概算保険料申告書」も提出します。
3.1.2 ハローワークへの届出
次に、従業員の失業などに備える「雇用保険」の手続きです。こちらは事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)で行います。
雇用保険適用事業所設置届
事業所として、初めて雇用保険に加入する従業員を雇用した場合に提出します。提出期限は、事業所を設置した日の翌日から10日以内です。労働保険関係成立届の控えなどを添付して提出します。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用した従業員一人ひとりを雇用保険に加入させるための手続きです。従業員を雇用した日(資格取得日)の属する月の翌月10日までに提出が必要です。この手続きを怠ると、従業員が失業手当などを受けられなくなる可能性があるため、必ず期限内に届け出てください。
3.2 社会保険に関する手続き
社会保険とは、「健康保険」と「厚生年金保険」の総称です。法人の美容室、または常時5人以上の従業員を使用する個人経営の美容室は、社会保険の強制適用事業所となり、加入が義務付けられています。
3.2.1 年金事務所への届出
社会保険の手続きは、事業所を管轄する年金事務所で行います。健康保険組合に加入する場合は、そちらへの手続きも別途必要です。
健康保険・厚生年金保険新規適用届
事業所が社会保険の適用事業所となった際に提出する書類です。適用事業所となった事実発生から5日以内と、極めてタイトなスケジュールのため、法人設立時や従業員が5人以上になった時点ですぐに手続きを行いましょう。
被保険者資格取得届と被扶養者(異動)届
新たに従業員を雇用した際に、その従業員を健康保険・厚生年金保険に加入させるための届出です。こちらも雇用した日(資格取得日)から5日以内に提出しなければなりません。従業員に扶養する家族がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」もあわせて提出し、家族の保険証を発行してもらう必要があります。
3.3 税金に関する手続き
従業員に給与を支払うと、事業主は給与から所得税を天引き(源泉徴収)して、国に納める義務が生じます。そのための手続きを税務署で行います。
3.3.1 税務署への届出
給与支払いを始めることを、事業所を管轄する税務署へ届け出る必要があります。
給与支払事務所等の開設届出書
初めて従業員を雇用し、給与の支払いを開始する際に提出する書類です。給与支払事務所を開設した日から1ヶ月以内に所轄の税務署へ提出します。この届出を行うことで、年末調整に関する書類などが税務署から送付されるようになります。個人事業主が開業届を提出する際に、給与支払いの開始時期を記載していれば、この届出は不要な場合もあります。

4. ステップ3 毎月の給与計算と美容室経理のポイント
従業員を雇用すると、毎月必ず発生するのが給与計算と支払いです。これは美容室経営における経理業務の根幹をなす部分であり、正確性が強く求められます。ここでは、給与計算の基本的な流れから、法律で定められた控除項目、そして保管義務のある重要書類まで、美容室オーナーが押さえておくべきポイントを解説します。会計ソフトや給与計算ソフトの活用も視野に入れると、業務負担を軽減できます。

4.1 給与計算の基本的な流れ
給与計算は、大きく分けて3つのステップで進められます。まず、基本給に役職手当や技術手当、残業代などを合算して「総支給額」を確定します。次に、後述する社会保険料や税金などを総支給額から差し引く「控除額」を計算します。最後に、総支給額から控除額を差し引いた金額が、従業員の手元に渡る「差引支給額(手取り額)」となります。この一連の計算を毎月、給与支払日までに正確に行う必要があります。
4.2 給与から天引きする項目
従業員の給与からは、法律に基づいていくつかの項目を天引き(控除)し、事業主が本人に代わって国や自治体に納付する義務があります。これを怠るとペナルティが課される可能性があるため、各項目の内容を正しく理解しておきましょう。

4.2.1 社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)
社会保険料は、病気やけがに備える「健康保険」、老後の生活を支える「厚生年金保険」、そして40歳以上の従業員が対象となる「介護保険」の3つで構成されます。保険料は、従業員の給与額を一定の範囲で区切った「標準報酬月額」を基に算出され、その金額を従業員と事業主が半分ずつ(折半)負担します。保険料率は毎年見直されるため、全国健康保険協会(協会けんぽ)や日本年金機構の情報を定期的に確認することが重要です。
4.2.2 雇用保険料
雇用保険は、従業員が失業した際の生活保障や再就職支援などを目的とした制度です。保険料は、毎月の給与総額(通勤手当なども含む)に定められた雇用保険料率を掛けて計算します。この保険料も従業員と事業主の双方で負担しますが、社会保険料とは異なり、事業の種類によって定められた負担割合に応じて納付します。一般的に事業主側の負担割合が高く設定されています。
4.2.3 所得税(源泉徴収)
所得税は、個人の所得に対して課される国税です。事業主は、従業員に給与を支払う際に所得税をあらかじめ天引きし、国に納付する「源泉徴収」を行う義務があります。税額は、社会保険料などを控除した後の課税対象額と、扶養している親族の人数によって決まります。具体的な金額は、国税庁が毎年発行する「源泉徴収税額表」で確認できます。
4.2.4 住民税(特別徴収)
住民税は、前年の所得を基に従業員が住む都道府県および市区町村に納める地方税です。原則として、事業主が給与から天引きして納付する「特別徴収」という方法が取られます。事業主が税額を計算する必要はなく、毎年5月頃に各市区町村から送付される「住民税決定通知書」に記載された月々の納付額を、給与から天引きするだけで問題ありません。この通知書に基づき、6月から翌年5月までの12回に分けて徴収します。
4.3 給与明細書の発行と法定三帳簿の整備
給与を支払う際には、支給額や控除項目の内訳を記載した「給与明細書」を従業員に交付することが法律で義務付けられています。これは従業員が自身の給与内容を確認するための重要な書類です。
また、労働基準法では、事業主に「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」という法定三帳簿の作成と保管を義務付けています。賃金台帳は全従業員の給与計算の根拠となる記録であり、出勤簿は労働時間や休日を管理する上で不可欠です。これらの書類は、労働基準監督署の調査などで提出を求められることがあるため、常に正確な情報を記録し、適切に管理する体制を整えましょう。
5. ステップ4 年に一度の重要な経理・労務手続き
従業員を雇用すると、毎月の給与計算や社会保険料の納付以外にも、年に一度必ず行わなければならない重要な手続きが発生します。これらの手続きは期限が定められており、遅延すると追徴金や延滞金が発生する可能性があるため、年間スケジュールを把握し、計画的に準備を進めることが不可欠です。

5.1 年末調整の実施
年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計額と、その従業員が本来納めるべき年間の所得税額を比較し、その差額を精算する手続きです。多くの従業員は、この年末調整によって年間の所得税の納税が完了します。
オーナーは、従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や、生命保険料・地震保険料の控除証明書などを回収し、それらの情報に基づいて税額を再計算します。毎月の源泉徴収額と年間の正しい税額との差額を精算する重要な手続きであり、通常12月の最終給与支払時に還付または追加徴収を行います。その後、翌年1月31日までに「源泉徴収票」を従業員に交付し、「給与支払報告書」を各市区町村へ、「法定調書合計表」を税務署へ提出する必要があります。
5.2 労働保険の年度更新
労働保険の年度更新は、前年度(4月1日から翌年3月31日まで)に支払った賃金総額に基づいて確定保険料を計算し、すでに納付した概算保険料との差額を精算すると同時に、新年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。
確定保険料の精算と新年度の概算保険料の納付を同時に行う手続きで、毎年6月1日から7月10日までの期間に行います。管轄の労働局から送付される申告書を用いて計算し、金融機関や所轄の労働基準監督署、都道府県労働局で申告・納付を完了させます。この手続きを怠ると、政府が保険料を決定し、さらに追徴金が課される場合があるため注意が必要です。
5.3 社会保険の算定基礎届
社会保険の算定基礎届(正式名称:被保険者報酬月額算定基礎届)は、健康保険と厚生年金保険の保険料を計算する基礎となる「標準報酬月額」を、年に一度見直すための手続きです。従業員の実際の給与額と保険料額に大きな乖離が生じないように行われます。
毎年7月1日時点で雇用している全被保険者を対象に、その年の4月、5月、6月に支払った給与の平均額を算出し、管轄の年金事務所へ届け出ます。提出期間は毎年7月1日から7月10日までです。この届出によって決定された新しい標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年8月までの各月の保険料計算に使用されます。実際の給与額に合わせて社会保険料を適正化するための重要な手続きであり、従業員が受け取る将来の年金額にも影響します。
6. 美容室の従業員雇用で活用したい制度と注意点
従業員を雇用する際、法律で定められた手続き以外にも、知っておくことで店舗運営を有利に進めたり、将来のトラブルを未然に防いだりできる制度や注意点があります。ここでは、オーナーがぜひ押さえておきたいポイントを解説します。
6.1 作成が推奨される就業規則
就業規則とは、労働時間、賃金、休日、服務規律といった職場のルールを定めた規則集です。常時10人以上の従業員を使用する事業場では、作成と労働基準監督署への届出が法律で義務付けられています。
しかし、従業員が10人未満の美容室であっても、労使間の無用なトラブルを未然に防ぎ、公平で円滑な店舗運営を実現するために作成しておくことが強く推奨されます。特に美容室では、練習時間や研修の取り扱い、SNSの利用ルール、お客様への接客態度など、独自のルールを明文化しておくことで、従業員との認識のズレを防ぐことができます。
6.2 活用できる助成金や補助金
従業員の雇用や労働環境の改善に取り組む事業主に対して、国は様々な助成金や補助金を用意しています。これらは融資と異なり返済不要の資金であり、人材の採用・育成や労働環境の改善に有効活用できます。
美容室で活用しやすい代表的な助成金には、以下のようなものがあります。
- キャリアアップ助成金:有期雇用のスタッフを正規雇用に転換した場合などに支給されます。
- トライアル雇用助成金:職業経験の少ない未経験者などを試行的に雇用した場合に支給されます。
- 特定求職者雇用開発助成金:高齢者や母子家庭の母など、就職が困難な方を継続して雇用した場合に支給されます。
これらの助成金は、申請手続きが複雑で、雇用前に計画書を提出する必要があるなど、一定の要件があります。活用を検討する際は、早めにハローワークや社会保険労務士へ相談することをおすすめします。
6.3 美容室経理は専門家への相談も検討
はじめての従業員雇用では、これまで解説したように、経理・労務に関する専門的な手続きが数多く発生します。オーナー自身がすべてを抱えると、本来の業務であるサロンワークに支障をきたしたり、手続きのミスや漏れが発生したりするリスクがあります。負担が大きいと感じた場合は、専門家への相談や業務委託も有効な選択肢です。

6.3.1 税理士に相談するメリット
税理士は、税務と会計の専門家です。従業員雇用に伴う経理業務について相談することで、以下のようなメリットが得られます。
- 毎月の給与計算や年末調整を正確に代行してもらえる。
- 日々の記帳から決算申告まで、経理業務全般を任せられる。
- 節税対策や資金繰り、融資に関する専門的なアドバイスが受けられる。
日々の煩雑な経理業務から解放され、節税や資金繰りといった経営の根幹に関わる相談ができる点が最大のメリットです。経営者として、より本業に集中できる環境が整います。

6.3.2 社会保険労務士に相談するメリット
社会保険労務士(社労士)は、労働・社会保険と労務管理の専門家です。従業員の雇用に関する手続きや労務管理について、以下のようなサポートが受けられます。
- 労働保険・社会保険の複雑な新規加入手続きや、従業員の入退社に伴う手続きを代行してもらえる。
- 法律に準拠した雇用契約書や就業規則の作成をサポートしてもらえる。
- 活用できる助成金の提案から申請代行までを任せられる。
- 残業代問題やハラスメントなど、労務トラブルに関する相談ができる。
複雑な労働・社会保険の手続きを正確に任せられるだけでなく、従業員が安心して働ける職場環境を整備し、労務トラブルのリスクを低減できることが大きなメリットです。
7. まとめ
美容室で初めて従業員を雇う際、経理や労務の手続きは複雑です。労働保険や社会保険の加入、税務署への届出など、期限内に対応すべき作業が多数発生します。また、雇用契約書の作成や毎月の給与計算も欠かせません。これらの手続きを正確に行うことが、従業員との信頼関係を築き、安定した店舗運営の基盤となります。不安な場合は、税理士や社会保険労務士など専門家の力を借りることも、本業に集中するための有効な手段です。