まだ白色申告?【美容師モーニング講座】で学ぶ知らないと損する「青色申告とは」

フリーランス美容師や独立したてのオーナーのあなたへ。まだ白色申告で損をしていませんか?本記事では「青色申告」について、白色申告との違いや節税メリットを分かりやすく解説します。結論、美容師なら最大65万円の特別控除が受けられる青色申告が断然お得です。この記事を読めば、会計ソフトを使った簡単なやり方から経費にできるものの範囲まで全て分かり、確定申告への不安を解消できます。

目次

1. 美容師なら知っておきたい青色申告とは?白色申告との違いを解説

フリーランスや個人事業主として働く美容師にとって、確定申告は避けて通れない大切な手続きです。その確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があるのをご存知でしょうか?「なんだか難しそう…」と、これまで白色申告で済ませてきた方も多いかもしれません。しかし、青色申告には、白色申告にはない大きな節税メリットがあります。この章では、まず青色申告の基本と、白色申告との違いを分かりやすく解説します。

1.1 そもそも青色申告とは何か

青色申告とは、日々の売上や経費などを所定のルールに従ってきちんと帳簿に記録し、その記録に基づいて所得を計算・申告する制度のことです。少し手間はかかりますが、正しく帳簿付けを行うことで、税金面でさまざまな特典(メリット)を受けられるのが最大の特徴です。個人事業主としてサロンを経営したり、業務委託で働いたりしている美容師の方は、この青色申告を選択することができます。

1.2 白色申告と青色申告の決定的な違い

「青色申告がお得なのはわかったけど、具体的に何が違うの?」と感じる方も多いでしょう。ここでは、両者の決定的な違いを「帳簿の付け方」「控除額」「事前申請」の3つのポイントに絞って比較します。

1.2.1 帳簿の付け方(記帳方法)の違い

最も大きな違いは、日々の取引を記録する帳簿の付け方です。白色申告は「単式簿記」という、お小遣い帳のようなシンプルな方法で記帳が認められています。一方、青色申告で最大のメリットを受けるためには「複式簿記」という正規の簿記原則に則った記帳が求められます。複式簿記は少し複雑ですが、お金の出入りだけでなく財産の状態まで正確に把握できるため、経営状況の分析にも役立ちます。

1.2.2 控除額と節税効果の違い

節税効果に直結するのが、この控除額の違いです。白色申告には、青色申告のような特別な控除はありません。しかし、青色申告では「青色申告特別控除」として、所得金額から最大で65万円を差し引くことができます。所得が低くなれば、その分、納めるべき所得税や住民税も安くなります。この65万円の控除は、青色申告を選ぶ最大のメリットと言えるでしょう。

1.2.3 事前申請の有無

手続き面での大きな違いが、事前申請の要否です。白色申告は特に事前の届出は必要ありません。一方、青色申告を始めるためには、あらかじめ税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。この申請書には提出期限が定められているため、青色申告に切り替えたいと思ったら、早めに準備を始めることが重要です。

2. 最大65万円控除も!美容師が青色申告を選ぶべき5つのメリット

青色申告には、白色申告にはない税制上の特典がたくさん用意されています。特に個人でサロンを経営する美容師さんにとっては、手元に残るお金が大きく変わる可能性も。ここでは、美容師が青色申告を選ぶべき5つの大きなメリットを具体的に解説します。

2.1 メリット1 青色申告特別控除で所得税が安くなる

青色申告の最大のメリットが、この「青色申告特別控除」です。これは、売上から経費を差し引いた所得金額から、さらに最大65万円を差し引くことができる制度です。所得が低くなれば、その分、所得税や住民税、国民健康保険料も安くなります。

控除額は、帳簿の付け方や申告方法によって10万円、55万円、65万円の3段階に分かれます。最高額である65万円の控除を受けるためには、複式簿記での記帳と、e-Tax(電子申告)での確定申告が必要です。手間はかかりますが、それに見合うだけの大きな節税効果が期待できます。

2.2 メリット2 赤字を3年間繰り越せる純損失の繰越控除

独立開業した初年度は、内装工事や美容器具の購入などで経費がかさみ、赤字になってしまうことも少なくありません。青色申告なら、その年に出た赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺することができます。

例えば、1年目に100万円の赤字が出ても、2年目に200万円の黒字が出た場合、赤字の100万円を差し引いて100万円の所得として申告できます。これにより、事業が軌道に乗った後の税負担を大幅に軽減できるのです。

2.3 メリット3 家族への給与を経費にできる青色事業専従者給与

配偶者や親族にサロンの受付や経理を手伝ってもらっている美容師さんも多いでしょう。青色申告では、一定の条件を満たせば、家族に支払った給与を「青色事業専従者給与」として全額経費に計上できます。

「生計を共にしている」「15歳以上である」「その事業に専ら従事している」などの条件がありますが、事前に届出を提出すれば、適正な金額の給与を経費にできるため、世帯全体での所得税を抑える効果があります。白色申告の専従者控除よりも節税効果が高くなるケースがほとんどです。

2.4 メリット4 30万円未満の備品を一括で経費にできる少額減価償却資産の特例

美容師の仕事には、スタイリングチェアやシャンプーユニット、高機能なドライヤーなど、高額な備品が欠かせません。通常、10万円以上の備品は固定資産となり、数年に分けて経費にする「減価償却」という手続きが必要です。

しかし、青色申告者であれば「少額減価償却資産の特例」を利用でき、取得価額が30万円未満の備品であれば、購入した年に一括で経費にできます(年間合計300万円まで)。これにより、設備投資をした年の利益を大きく圧縮し、納税額を抑えることが可能になります。

2.5 メリット5 自宅兼サロンの家賃や光熱費も経費にできる

自宅の一部を施術スペースや事務所として使っている場合、家賃や水道光熱費、インターネット通信費などの一部を経費にできます。これを「家事按分(かじあんぶん)」といいます。

青色申告では、帳簿に記録を残すことで、事業で使っている割合を客観的に説明しやすくなります。例えば、総床面積のうちサロンとして使用している面積の割合で家賃を按分したり、業務で使用した時間で電気代を計算したりすることで、プライベートな支出と明確に区別し、正しく経費として計上できます。

3. 青色申告のデメリットと美容師が注意すべきポイント

大きな節税効果が魅力の青色申告ですが、メリットばかりではありません。特に、サロンワークで忙しい美容師さんにとっては、デメリットと感じる部分も存在します。しかし、事前に知っておけば対策は可能です。ここでは、青色申告のデメリットと注意すべきポイントを2つ解説します。

3.1 複式簿記での記帳に手間がかかる

青色申告で最大65万円の特別控除を受けるためには、「複式簿記」という正規の簿記原則にもとづいた帳簿付けが必要です。これは、お小遣い帳のように収入と支出を記録する白色申告の「簡易簿記」とは異なり、「借方」「貸方」といった項目を使って取引を記録するため、簿記の知識がない方にとっては難しく感じられ、手間がかかるのが最大のデメリットです。

しかし、最近では簿記の知識がなくても、ガイドに従って入力するだけで自動的に複式簿記の帳簿を作成してくれる会計ソフトが普及しています。弥生会計やfreee会計、マネーフォワード クラウド確定申告などを活用すれば、この手間は大幅に軽減できるでしょう。

3.2 事前に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要

青色申告は、確定申告の時期になって「今年は青色申告にしよう」と決めても、すぐに適用できるわけではありません。事前に「所得税の青色申告承認申請書」を管轄の税務署に提出し、承認を受ける必要があります。

この申請書には提出期限があり、原則として青色申告をしたい年の3月15日までに提出しなければなりません。もし、年の途中で独立・開業した場合は、開業日から2ヶ月以内が提出期限です。この期限を1日でも過ぎてしまうと、その年は白色申告しかできなくなり、大きな節税のチャンスを逃してしまいます。開業届を提出する際に、一緒に提出するのが最も確実で忘れない方法です。

4. 美容師のための青色申告 やり方かんたん3ステップ

「青色申告って、なんだか難しそう…」と感じていませんか?ご安心ください。これからご紹介する3つのステップを踏めば、忙しいサロンワークの合間でも、誰でもかんたんに青色申告を始めることができます。節税への第一歩を、ここから踏み出しましょう。

4.1 ステップ1 開業届と青色申告承認申請書を税務署へ提出する

青色申告を始めるには、まず2つの重要な書類を税務署に提出する必要があります。それは「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と「所得税の青色申告承認申請書」です。

これらの書類は、納税地を管轄する税務署の窓口で直接提出するか、郵送、またはe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用してオンラインで提出できます。青色申告をしたい年の3月15日までに申請が必要です。もし年の途中(1月16日以降)に開業した場合は、事業を開始した日から2ヶ月以内に提出すれば間に合います。この期限を逃すと、その年は自動的に白色申告になってしまうため、開業したらすぐに2つの書類をセットで提出すると覚えておきましょう。

4.2 ステップ2 日々の売上や経費を帳簿につける(記帳)

青色申告の承認が下りたら、次に行うのが日々の取引の記録、つまり「帳簿付け(記帳)」です。お客様からのカット代やカラー代などの売上、ハサミや薬剤などの仕入れ、家賃や水道光熱費といった経費を、毎日コツコツと記録していきます。

最大のメリットである65万円の特別控除を受けるためには、「複式簿記」という方法で記帳する必要があります。一方、10万円の控除でよければ「簡易簿記」という、より簡単な方法でも問題ありません。日々の取引を証明するレシートや領収書は、経費を証明する大切な証拠になるので、必ず保管しておきましょう。

4.2.1 会計ソフトを使えば簿記の知識がなくても安心

「複式簿記なんて専門知識がないから無理…」と諦める必要はありません。現代では、簿記の知識がなくてもかんたんに帳簿付けができる便利な会計ソフトがあります。「freee(フリー)」や「マネーフォワード クラウド確定申告」、「やよいの青色申告 オンライン」といったクラウド会計ソフトが人気です。

これらのソフトは、日々の売上や経費を入力するだけで、自動的に複式簿記の形式で帳簿を作成してくれます。銀行口座やクレジットカードを連携させれば、取引データが自動で取り込まれるため、入力の手間も大幅に削減できます。青色申告を成功させるには、会計ソフトの活用が必須と言えるでしょう。

4.3 ステップ3 確定申告書を作成して提出する

1年間の帳簿付けが終わったら、いよいよ最終ステップの確定申告です。毎年原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に、1年間の所得と納税額を計算し、税務署に報告します。

青色申告では、「確定申告書」と「青色申告決算書」の2種類の書類を作成して提出します。会計ソフトを使っていれば、日々の入力データを元に、これらの申告書類もクリック操作でほとんど自動作成できます。作成した書類は、e-Taxで電子申告するのが最もおすすめです。なぜなら、最大65万円の控除を受けるためには、e-Taxでの申告が必須条件となっているからです。その他、税務署の窓口へ持参したり、郵送で提出する方法もあります。

5. これって経費になる?美容師の青色申告で経費にできるもの一覧

青色申告で節税効果を高めるには、経費を漏れなく計上することが重要です。美容師の仕事においては、どこまでが経費として認められるのでしょうか。基本的な考え方は「事業の売上を上げるために直接かかった費用」であるかどうかです。ここでは、美容師が経費にできるものの代表例を具体的に解説します。

5.1 ハサミや薬剤などの材料費や消耗品費

お客様への施術に直接使用するものは、そのほとんどが経費として計上できます。これらは日々のサロンワークに欠かせないものであり、事業との関連性が非常に明確です。勘定科目としては「仕入高」や「消耗品費」として処理します。

  • シザー、コーム、ブラシ、ドライヤーなどの道具類
  • カラー剤、パーマ液、シャンプー、トリートメントなどの薬剤
  • タオル、クロス、コットン、イヤーキャップなどの備品
  • お客様用の雑誌やドリンク代
  • カルテや予約表などの事務用品

5.2 セミナー参加費や書籍代などの研修費

美容師としてのスキルや知識を向上させるための費用も、事業に必要な投資として経費になります。新しい技術を学んだり、経営の知識を深めたりすることは、将来の売上につながる重要な活動です。これらは「研修費」や「新聞図書費」として計上します。

  • カットやカラーの技術セミナー、講習会の参加費用
  • コンテストの出場費用や交通費
  • 経営やマーケティングに関するセミナー費用
  • 美容専門誌や技術解説書の購入代金

5.3 仕事で使うスマホ代やネット代などの通信費

今や予約管理やSNSでの情報発信、お客様との連絡など、スマートフォンやインターネットは美容師の仕事に不可欠なツールです。これらの通信にかかる費用も「通信費」として経費にできます。

ただし、1台のスマートフォンをプライベートと仕事で兼用している場合は注意が必要です。その場合は、使用時間や頻度に応じて「家事按分(かじあんぶん)」という考え方で事業で使った割合分だけを経費として計上します。例えば、1日のうち4割を仕事で使っているなら、月々の通信費の40%を経費にする、といった形です。

5.4 お客様との食事代や贈答品などの接待交際費

お客様や取引先との良好な関係を築くための費用は、「接待交際費」として経費計上が可能です。売上を維持・拡大するためには、技術だけでなくコミュニケーションも大切です。

ただし、プライベートな食事と混同されないよう、領収書に「誰と」「何のために」利用したのかをメモしておくことが非常に重要です。税務調査の際に事業との関連性を客観的に説明できるように準備しておきましょう。

  • お客様やモデルとの打ち合わせを兼ねた飲食代
  • お世話になっている取引先へのお中元やお歳暮
  • お客様へのささやかなプレゼント代

6. 美容師の青色申告に関するよくある質問

6.1 いつから青色申告を始めるのがベスト?

青色申告のメリットを最大限に活かすなら、事業を開始した初年度から始めるのがベストです。具体的には、開業日から2ヶ月以内に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しましょう。

すでに白色申告で事業を行っている場合は、青色申告に切り替えたい年の3月15日までに申請書を提出する必要があります。節税効果は1年でも早く始めた方が大きくなるため、思い立ったらすぐに行動に移すことをおすすめします。

6.2 会計ソフトはどれを選べばいい?おすすめは?

簿記の知識に自信がない美容師さんでも、クラウド会計ソフトを使えばスマホやパソコンで簡単に入力できます。レシートを撮影するだけで経費を登録できたり、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で帳簿を作成してくれたりする機能が便利です。

日本国内で人気の高い代表的なソフトには「freee(フリー)」「マネーフォワード クラウド確定申告」「やよいの青色申告 オンライン」などがあります。それぞれ操作性や料金プランが異なるため、まずは無料のお試し期間などを利用して、ご自身のスタイルに合ったソフトを見つけるのが良いでしょう。

6.3 もし申告期限に遅れてしまったらどうなる?

確定申告の期限(原則として毎年3月15日)に遅れてしまうと、いくつかのペナルティが課される可能性があります。まず、本来納めるべき税額に加えて「無申告加算税」や「延滞税」といった追徴課税が発生します。

さらに、青色申告者にとって最も大きなデメリットは、最大65万円の青色申告特別控除が受けられなくなってしまうことです。期限後申告になると控除額が10万円に減額されてしまうため、節税効果が大幅に薄れてしまいます。特別な事情がない限り、必ず期限内に申告を済ませましょう。

7. まとめ

今回は美容師が知っておくべき青色申告について解説しました。青色申告は、最大65万円の特別控除や赤字の3年間繰越など、白色申告にはない強力な節税メリットがあります。複式簿記の手間はデメリットですが、「freee会計」や「マネーフォワード クラウド確定申告」などの会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても簡単にクリアできます。賢く節税して手元資金を増やすため、まずは期限内に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出することから始めましょう。

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この記事を書いた人

美容室のミカタのアバター 美容室のミカタ 美容室の支援実績が豊富な税理士・社労士・弁護士

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