本当に大丈夫?開業時は安い税理士事務所が良いか?格安顧問料の落とし穴

開業時の税理士選びで「とにかく安い方が良い」と考えていませんか?その選択が、将来の融資や節税で不利になる可能性があります。この記事では、料金の安さだけで税理士を選ぶことの具体的なリスクと、個人事業主・法人別の費用相場を解説します。結論として、事業の成長を目指すなら料金だけで選ぶのは危険です。この記事を読めば、後悔しない税理士の見極め方と、あなたの事業に最適なパートナーを見つける方法が分かります。

目次

1. 開業時の税理士探し「安い事務所が良い」は本当か

事業を立ち上げたばかりの開業期は、オフィス契約や設備投資など何かと物入りで、資金繰りも厳しい時期です。「税理士に支払う顧問料も、できるだけ安く抑えたい」と考えるのは当然のことでしょう。インターネットで検索すれば、「月額顧問料1万円以下」といった格安料金を掲げる税理士事務所が数多く見つかり、非常に魅力的に映るかもしれません。

しかし、その選択は本当にあなたの事業のためになるのでしょうか。結論から言えば、料金の安さだけを基準に税理士を選ぶのは非常に危険です。安易な選択が、後々の節税機会の損失や、融資審査の失敗、さらには税務調査での不利な状況を招く可能性があるのです。

1.1 「安い」には必ず理由があることを理解しよう

格安の料金設定が実現できるのには、必ず理由があります。多くの場合、サービスの範囲が限定されていたり、サポート体制が手薄だったりすることで低価格が維持されています。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 相談業務は含まれず、記帳代行と決算申告のみに特化している
  • 面談は有料オプション、または回数に厳しい制限がある
  • 経験の浅いスタッフが担当し、税理士本人と直接話す機会がない
  • 業務を徹底的に自動化しており、個別具体的なアドバイスが受けられない

もちろん、これらのサービスが必ずしも悪いわけではありません。しかし、資金調達や事業計画など、専門家のアドバイスが最も必要な開業期において、本当に必要なサポートが受けられない可能性があります。目先の安さにとらわれる前に、その料金で「何をしてくれるのか」「何をしてくれないのか」を明確に理解することが、後悔しない税理士選びの第一歩です。

2. 料金だけで判断はNG 安い税理士事務所の5つのリスク

開業時は少しでもコストを抑えたいもの。税理士の顧問料も例外ではなく、「とにかく安い事務所を」と考えてしまうかもしれません。しかし、料金の安さだけで税理士を選ぶと、後々「こんなはずではなかった」と後悔する可能性があります。ここでは、格安な税理士事務所に潜む5つのリスクを具体的に解説します。

2.1 リスク1 必要な時に相談できない

格安プランの多くは、サービス内容を最低限に絞ることで低価格を実現しています。そのため、電話や面談での相談回数に上限が設けられていたり、そもそも相談自体が別料金のオプションになっていたりするケースが少なくありません。事業を行っていると、資金繰りや契約、従業員の雇用など、税務以外の相談事も次々と発生します。いざという時に気軽に相談できず、迅速な経営判断の機会を逃してしまうことは、事業の成長にとって大きな足かせとなり得ます。

2.2 リスク2 融資や助成金のチャンスを逃す

創業期には、日本政策金融公庫などからの融資や、国・自治体が提供する補助金・助成金の活用が事業を軌道に乗せるための重要な鍵となります。しかし、格安の税理士事務所では、日々の記帳代行や申告業務で手一杯なことが多く、融資・助成金に関する情報提供や、審査で重要となる事業計画書の作成支援まで手が回らない場合があります。本来活用できるはずだった資金調達のチャンスを情報不足で逃してしまい、資金繰りに窮してしまうリスクがあるのです。

2.3 リスク3 最大限の節税ができない

税理士に依頼する大きなメリットの一つが「節税」です。しかし、格安プランでは、決算期が近づいてから慌てて数字をまとめるだけで、計画的な節税対策の提案まで期待できないことがほとんどです。役員報酬の最適な金額設定、倒産防止共済や小規模企業共済への加入、消費税の納税義務の有利な選択など、事前に検討すべき節税策が実行されず、余計な税金を支払うことになりかねません。目先の顧問料は安くても、トータルで見るとかえって損をしてしまう可能性があります。

2.4 リスク4 税務調査で不利になる可能性がある

格安料金を維持するために、経験の浅いスタッフが担当したり、業務が流れ作業のようになっていたりする事務所も存在します。その結果、日々の会計処理にミスや漏れが生じ、税務調査の対象となるリスクが高まることがあります。万が一税務調査が入った際に、担当者の経験不足から調査官の指摘に的確な主張ができず、本来は不要な追徴課税を受け入れてしまうケースも考えられます。信頼できる税理士は、調査でしっかりと事業主の盾となってくれる存在です。

2.5 リスク5 結局追加料金で高くなる

月額顧問料が「1万円」などと安価に設定されていても、その料金に含まれる業務範囲をよく確認する必要があります。「記帳代行は別途」「相談は1回〇円」「年末調整は別料金」といった形で、基本料金に含まれるサービスが極端に限定されていることが珍しくありません。決算申告料が別途高額に設定されていることもあります。結局、必要な業務を都度オプションで追加していくと、標準的な料金プランの事務所よりも総支払額が高くなってしまった、という事態に陥るリスクがあります。

3. あなたの場合はいくら?開業時の税理士費用の目安

税理士に支払う費用は、事業の規模や依頼する業務範囲によって大きく変動します。安いという理由だけで契約すると、後から「こんなはずではなかった」と後悔することも少なくありません。まずは、ご自身の状況に応じた費用の目安を把握することが、適切な税理士選びの第一歩です。

一般的に、税理士費用は「月額の顧問料」と「年一回の決算申告料」の合計で決まります。顧問料には日々の経理や税務に関する相談、帳簿のチェックなどが含まれ、決算申告料は確定申告書や決算書の作成・提出にかかる費用です。その他、記帳代行や年末調整、税務調査の立会いなどは別途オプション料金となるケースがほとんどです。

3.1 顧問料月額1万円台から 格安プランの実態

Webサイトなどで「顧問料月額1万円」といった格安プランを見かけることがあります。開業時の資金に余裕がない創業者にとって非常に魅力的に映りますが、その内容をよく確認する必要があります。

格安プランの多くは、サービス内容が最低限に絞られているケースがほとんどです。例えば、「訪問や面談なし、相談はメールのみ」「記帳代行は含まれず、会計ソフトの入力はすべて自分で行う」といった条件が付いていることが多く、手厚いサポートは期待できません。また、月額顧問料は安くても、決算申告料が相場より高く設定されており、年間のトータル費用でみると決して安くなかったということも珍しくありません。契約前には、必ずサービス範囲と追加料金の有無を書面で確認しましょう。

3.2 個人事業主と法人で異なる料金相場

税理士費用は、事業形態によっても相場が異なります。一般的に、会計処理や申告手続きが複雑になる法人のほうが、個人事業主よりも高くなる傾向にあります。

以下に、年間の売上高に応じた料金相場の目安を示します。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、業種や依頼内容、訪問頻度などによって変動します。

3.2.1 個人事業主・フリーランスの場合

個人事業主の場合、顧問契約を結ばず、年に1回の確定申告のみを依頼するケースも多いです。記帳代行を依頼するかどうかで費用が大きく変わります。

  • 顧問料(記帳代行なし):月額1万円~3万円
  • 顧問料(記帳代行あり):月額2万円~5万円
  • 確定申告料のみ:5万円~15万円程度

3.2.2 法人の場合

法人は個人事業主と比べて経理処理が複雑になり、提出すべき書類も多いため、顧問料・決算申告料ともに高くなるのが一般的です。ただし、開業したばかりの法人向けに、初年度の料金を割安に設定している税理士事務所も多くあります。

  • 顧問料(売上3,000万円未満):月額2万円~4万円
  • 決算申告料(売上3,000万円未満):10万円~20万円程度
  • 顧問料(売上5,000万円未満):月額3万円~5万円
  • 決算申告料(売上5,000万円未満):15万円~25万円程度

これらの相場を参考に、複数の税理士事務所から見積もりを取り、サービス内容と料金のバランスが取れているかを見極めることが重要です。

4. 後悔しないために 開業時に頼れる税理士を見極める方法

開業時の税理士選びは、顧問料の安さだけで判断すると後悔につながる可能性があります。税理士は、単なる記帳代行や確定申告の担当者ではなく、事業を共に成長させていく重要なパートナーです。ここでは、長期的に信頼できる税理士を見極めるための3つの重要なポイントを解説します。

4.1 自分の事業や業界に詳しいか

税理士にも、それぞれ得意な業種や分野があります。例えば、飲食業、IT業、建設業、医療関係など、業界によって会計処理の慣行や適用される税制優遇措置は大きく異なります。あなたの事業や業界に精通した税理士であれば、業界特有の節税対策や最新の補助金・助成金情報を的確に提案してくれるでしょう。

無料相談などの機会を利用して、「同業種の顧問先はありますか?」「この業界で特に注意すべき税務上のポイントは何ですか?」といった質問を投げかけてみましょう。明確で具体的な回答が得られるかどうかが、専門性を見極める一つの指標となります。

4.2 コミュニケーションはスムーズか

顧問契約を結ぶと、税理士とは長い付き合いになります。そのため、専門知識や実績以上に、コミュニケーションの取りやすさが重要になる場面も少なくありません。相談したいときに気軽に連絡が取れるか、ストレスなくやり取りできるかといった「相性」もしっかり確認しましょう。

4.2.1 レスポンスの速さ

ビジネスの現場では、迅速な意思決定が求められます。資金繰りの相談や契約書の確認など、急を要する質問に対して返信が遅いと、ビジネスチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。問い合わせへの返信速度や、電話がつながらない場合の折り返しの有無など、対応のスピード感は契約前に必ずチェックしておきたいポイントです。最近では、ChatworkやSlackなどのチャットツールに対応している事務所も増えており、よりスピーディーな連携が期待できます。

4.2.2 専門用語を使わず説明してくれるか

税務や会計は専門用語が多く、経営者であってもすべてを理解するのは困難です。優秀な税理士は、難しい内容をそのまま伝えるのではなく、税務の知識がない人にも理解できるよう、かみ砕いて分かりやすく説明してくれます。面談の際に、あえて初歩的な質問をしてみて、親身になって丁寧に答えてくれるかどうかを確認してみましょう。高圧的な態度を取ったり、専門用語を並べて煙に巻いたりするような税理士は避けた方が賢明です。

4.3 資金調達や経営相談にも乗ってくれるか

開業期に最も重要な課題の一つが「資金調達」です。税務申告だけでなく、融資や経営に関する相談にも積極的に乗ってくれる税理士は、非常に心強い存在となります。具体的には、日本政策金融公庫などからの創業融資を受ける際の事業計画書の作成支援や、資金繰り表のチェック、補助金の申請サポートなどが挙げられます。

税理士が「認定支援機関(経営革新等支援機関)」に登録されているかどうかも、一つの判断材料になります。認定支援機関は、国から専門性を認められた専門家であり、特定の補助金申請や低金利融資制度の利用においてサポートを受けることができます。税務の枠を超え、経営全般をサポートしてくれるパートナーを探しましょう。

5. 安い税理士が良い場合とそうでない場合

ここまで安い税理士事務所のリスクについて解説してきましたが、必ずしも「格安=悪」というわけではありません。重要なのは、あなたが税理士に何を求めるかです。ご自身の事業フェーズや目的によって、最適な税理士の選び方は大きく異なります。

5.1 記帳代行だけ依頼したいなら格安プランも選択肢

もしあなたの目的が「日々の経理業務の負担を減らすこと」だけであれば、格安の税理士事務所や記帳代行サービスは有効な選択肢となり得ます。具体的には、以下のようなケースが当てはまります。

  • すでに事業が軌道に乗っており、経営に関する相談は特に必要ない
  • クラウド会計ソフトを導入しており、入力作業のみを外注したい
  • 確定申告や決算申告書の作成といった、年に一度の作業だけを依頼したい

これらの場合、税理士に求める役割は「作業の代行」がメインとなります。そのため、コストを抑えたプランでも目的を達成できる可能性が高いでしょう。ただし、格安プランでは、基本的に節税対策や融資相談といった付加価値の高いサービスは期待できないと割り切ることが重要です。

5.2 事業の成長を目指すならパートナーとしての税理士を

一方で、これから事業を拡大していきたい、積極的に資金調達を行いたいと考えている創業者にとって、税理士は単なる記帳代行者ではありません。事業の未来を共に描き、成長をサポートしてくれる重要な「ビジネスパートナー」です。

開業当初は、資金繰りや事業計画の策定など、数字にまつわる課題が山積しています。適切な顧問料を支払うことで、以下のような手厚いサポートが期待できます。

  • 創業融資や補助金申請を成功に導くための事業計画書作成支援
  • キャッシュフローを改善するための具体的な経営アドバイス
  • 最新の税制に基づいた、一歩踏み込んだ節税対策の提案
  • 税務調査が入った際の交渉や的確な対応

目先の顧問料の安さにとらわれず、将来得られるリターンを考えれば、信頼できる税理士への投資は決して高くありません。あなたの事業のビジョンを共有し、親身に相談に乗ってくれる税理士を選ぶことが、事業成功への近道となるでしょう。

6. まとめ

開業時に税理士を選ぶ際、料金の安さだけで判断するのは危険です。格安の顧問料には、相談回数が制限されたり、節税や融資の提案がなかったりといったリスクが潜んでいるためです。事業の成長を本気で目指すなら、単なる記帳代行者ではなく、経営の相談もできるパートナーとしての税理士を選ぶことが重要です。自身の事業の目的や将来像に合わせ、サービス内容をしっかり見極めましょう。

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この記事を書いた人

美容室のミカタのアバター 美容室のミカタ 美容室の支援実績が豊富な税理士・社労士・弁護士

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