まだ間に合う!サロンオーナーが年末までやらないといけない経理業務と確定申告の準備

年末はサロンの繁忙期。お客様への施術やスタッフの管理で手一杯になり、経理業務は後回しにしがちではありませんか?「何から手をつければいいかわからない」「確定申告の準備が不安」と感じている個人事業主のサロンオーナー様も多いはずです。本記事では、そんな忙しいオーナー様に向けて、年末までに必ず終わらせたい経理業務を具体的なチェックリスト形式で徹底解説します。1年間の売上や経費の確認、在庫の棚卸、各種控除証明書の準備といった必須タスクから、年明けの確定申告をスムーズに進めるための会計ソフトの活用法まで、この記事を読めばやるべきことが明確になります。結論として、年末の経理業務をしっかり行うことは、正確な納税額を把握して余計な税金を払わないため、そして青色申告特別控除などの節税メリットを最大限に活用するために不可欠です。この記事をガイドに、今年の経理を漏れなく終わらせ、気持ちよく新年を迎えましょう。

1. なぜ年末の経理業務がサロンオーナーにとって重要なのか
毎日のお客様対応や技術の研鑽で忙しいサロンオーナーにとって、経理業務は後回しにしがちな作業かもしれません。しかし、年末のこの時期に経理業務をしっかり行うことには、単に確定申告のためだけではない、サロン経営における3つの重要な意味があります。

1.1 1. 慌てない!余裕を持った確定申告の準備のため
個人事業主であるサロンオーナーにとって、年に一度の確定申告は避けては通れない義務です。年末に1年間の帳簿を整理しておかなければ、年が明けてから確定申告の期限間際に慌ててしまうことになります。期限に追われながらの作業は、計上漏れや計算ミスといった単純なミスを引き起こしやすく、それが税務署からの指摘や追徴課税につながるリスクも高まります。年末のうちに経理業務を進めておくことで、心に余裕を持って正確な申告準備ができるのです。
1.2 2. 払いすぎを防ぐ!年内にできる節税対策のため
年末は、その年の利益がほぼ確定するタイミングです。この時期に年間の売上と経費を正確に把握することで、おおよその納税額を予測できます。もし利益が想定以上に出ている場合、年内であれば新しい美容機器の導入や消耗品のまとめ買いといった節税対策を検討することが可能です。年が明けてしまうと、前年分の経費として計上することはできません。年末の経理業務は、賢く税金を納めるための最後のチャンスとも言えるのです。
1.3 3. 来年の売上アップへ!正確な経営状況の把握のため
1年間の数字をまとめることは、サロンの健康診断のようなものです。どのメニューの売上が伸びているのか、広告費や材料費は適切だったか、といった経営状況を客観的なデータで振り返ることができます。この分析結果は、来年度の事業計画を立てるための重要な指標となります。人気メニューの強化や、コスト削減のポイントを見つけることで、より戦略的なサロン経営が実現し、翌年の売上アップへと繋がっていくのです。
2. 【チェックリスト】サロンオーナーが年末までやらないといけない経理業務7選
確定申告の直前になって慌てないために、年末までにやるべき経理業務を7つの項目に分けました。一つひとつ着実にクリアして、気持ちよく新年を迎えましょう。このチェックリストを使って、作業の抜け漏れがないか確認してください。

2.1 1年間の売上と経費の最終確認
まずは、1月1日から12月31日までの1年間の売上と経費の全体像を把握することが重要です。日々の記帳が溜まっている場合は、このタイミングで必ず終わらせましょう。
売上については、レジのデータ、予約サイトの管理画面、銀行口座の入金履歴などを照らし合わせ、計上漏れがないか最終チェックを行います。特に、クレジットカード決済や電子マネー決済の売上は、入金までにタイムラグがあるため注意が必要です。
経費についても同様に、材料の仕入れ、家賃、水道光熱費、広告宣伝費、交通費など、事業に関わるすべての支出を洗い出します。経費の計上漏れは、そのまま納税額の増加に直結するため、領収書や請求書、クレジットカードの明細を隅々まで確認しましょう。
2.2 領収書や請求書の整理とファイリング
経費を証明するための証拠書類である領収書や請求書は、税務調査の際にも必要となる重要な書類です。月別や勘定科目別に分けて、スクラップブックやファイルに整理しておきましょう。
最近では、スマートフォンで撮影した写真やスキャンしたデータでの保存も認められています(電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります)。感熱紙のレシートは印字が消えやすいため、早めにスキャンするかコピーを取っておくと安心です。
整理ができていないと、経費の集計に時間がかかるだけでなく、計上できるはずの経費を見逃してしまう原因にもなります。年内に整理を完了させ、確定申告の準備をスムーズに進められる状態にしておきましょう。
2.3 シャンプーや化粧品などの在庫の棚卸
年末(12月31日時点)の在庫を数える「棚卸」は、正確な利益を計算するために不可欠な作業です。販売用のシャンプーやトリートメント、化粧品はもちろん、施術で使用するカラー剤やパーマ液などの材料も対象となります。
在庫は「資産」として扱われ、仕入れただけでは経費になりません。「売れた分」だけが「売上原価」という経費になるため、年末に残っている在庫の金額を正確に把握する必要があります。具体的には、「期首の在庫金額 + 年間の仕入高 - 期末の在庫金額」で売上原価を算出します。この作業を怠ると、利益を正しく計算できず、税金を払いすぎてしまう可能性もあります。
2.4 高額な美容機器などの減価償却資産の確認
施術用の椅子やベッド、スチーマー、脱毛器といった高額な美容機器、あるいは内装工事費など、取得価額が10万円以上のものは「減価償却資産」として扱います。これらは購入した年に全額を経費にするのではなく、法律で定められた耐用年数に応じて、数年に分けて経費計上(減価償却)する必要があります。
今年新たに購入した高額な資産がないか、固定資産台帳を確認・更新しましょう。青色申告をしている個人事業主の場合、30万円未満の資産であれば「少額減価償却資産の特例」を利用して、購入した年に一括で経費に計上することも可能です。
2.5 各種控除証明書の準備と確認
所得税の負担を軽減する「所得控除」を受けるためには、その支払いを証明する書類が必要です。年末になると、保険会社などから控除証明書が郵送で届き始めます。
以下の証明書が手元にあるか確認し、紛失しないように一か所にまとめて保管しておきましょう。
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 国民年金保険料控除証明書
- 小規模企業共済等掛金控除証明書
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金払込証明書
- ふるさと納税の寄附金受領証明書
これらの控除を漏れなく適用することが、賢い節税の第一歩です。万が一、証明書を紛失した場合は、早めに発行元へ再発行を依頼してください。
2.6 (スタッフ雇用者向け)年末調整の準備
スタッフを雇用しているサロンオーナーは、従業員の年末調整を行う義務があります。年末調整とは、毎月の給与から天引き(源泉徴収)した所得税の1年間の合計額と、本来納めるべき年税額との差額を精算する手続きです。
年末までに、従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「保険料控除申告書」などの必要書類を回収し、内容を確認します。その後、1年間の給与総額と社会保険料などを集計し、年税額を計算します。源泉徴収票の作成と交付、税務署への法定調書の提出までがオーナーの役割です。期限は翌年1月末ですが、作業量が多いため、年内から計画的に進めることが重要です。
2.7 おおよその納税額のシミュレーション
年間の売上と経費が固まったら、おおよその利益(所得)を算出し、所得税や住民税、事業税がいくらになるかシミュレーションしてみましょう。納税額を事前に把握しておくことで、納税資金を計画的に準備でき、精神的な余裕が生まれます。
「(売上 − 経費 − 所得控除)× 税率」という簡単な計算式でも概算できますが、弥生会計やfreeeなどの会計ソフトには納税額予測機能がついているものも多く、便利です。シミュレーションの結果、想定より利益が多く出ている場合は、年内に必要な消耗品を購入したり、広告宣伝費を使ったりといった節税対策を検討する最後のチャンスにもなります。
3. 年明けの確定申告をスムーズに進めるための準備
年末までの経理業務に目処が立ったら、次に見据えるべきは年明けの確定申告です。慌ただしい年度末を乗り越え、スムーズに申告を終えるためには、この時期からの準備が鍵を握ります。ここでは、確定申告を効率的に、そして有利に進めるための3つの準備について解説します。

3.1 青色申告と白色申告の違いを再確認する
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。もし現在、手続きが簡単な白色申告を選んでいるなら、来年以降のために青色申告への切り替えを検討する絶好の機会です。青色申告の最大のメリットは、最大65万円の特別控除が受けられる点です。これは、課税対象となる所得を大幅に圧縮できるため、節税効果が非常に高くなります。
その他にも、赤字を3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」や、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」など、サロン経営に役立つ特典が多くあります。複式簿記での記帳が必要になりますが、後述する会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても比較的簡単に対応可能です。来年から青色申告を始めたい場合は、原則としてその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があるため、今のうちから情報収集を始めましょう。
3.2 会計ソフトの活用で経理業務を効率化
日々の記帳から確定申告書類の作成まで、経理業務は時間と手間がかかるものです。そこでおすすめしたいのが、クラウド会計ソフトの導入です。「freee会計」や「マネーフォワード クラウド確定申告」、「やよいの青色申告 オンライン」といったサービスは、多くの個人事業主や小規模サロンで利用されています。
これらのソフトを活用すれば、銀行口座やクレジットカード、サロンで使っているPOSレジ(Airレジ、スマレジなど)と連携させることで、売上や経費のデータが自動で取り込まれ、仕訳作業が大幅に楽になります。また、スマートフォンアプリで領収書を撮影するだけで経費として登録できる機能もあり、施術の合間などのスキマ時間で経理作業を進めることが可能です。会計ソフトは、青色申告の複式簿記にも対応しており、確定申告の時期には指示に従って入力するだけで申告書類を自動で作成してくれます。経理の負担を減らし、サロンワークに集中するためにも、導入を積極的に検討しましょう。
3.3 税理士への相談も選択肢のひとつ
「経理業務がどうしても苦手」「節税について専門的なアドバイスが欲しい」「本業にもっと集中したい」というオーナー様は、税理士への相談も有効な選択肢です。税理士に依頼すれば、面倒な記帳代行から確定申告書の作成・提出までを任せることができます。
専門家に任せる最大のメリットは、正確な会計処理と申告による税務上のリスクを軽減できることです。さらに、サロンの経営状況に合わせた的確な節税対策や資金繰りのアドバイスを受けられる可能性もあります。年末は税理士にとっても繁忙期にあたるため、もし相談を考えているのであれば、年内のうちから早めに連絡を取り、相談のアポイントを取っておくことが重要です。費用はかかりますが、経理業務から解放される時間や、プロによる節税効果を考えれば、十分に価値のある投資と言えるでしょう。
4. サロンオーナーの経理に関するよくある質問
年末の経理作業を進める中で、多くのサロンオーナー様が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。確定申告で慌てないためにも、今のうちに疑問を解消しておきましょう。

4.1 領収書を紛失した場合の対処法は
経費の支払いを証明する領収書を紛失してしまっても、諦める必要はありません。領収書がない場合でも、支払いの事実を客観的に証明できる書類があれば経費として認められる可能性があります。
まずは、レシートやクレジットカードの利用明細、銀行の振込記録などが手元にないか確認しましょう。これらは領収書の代わりとして有効な証拠書類となります。
それらの書類もない場合は、「出金伝票」を作成する方法があります。出金伝票には「支払った日付」「支払先の名称」「支払った金額」「購入した品目やサービス内容」を具体的に記載します。例えば、「〇月〇日、〇〇ストアにて、施術用タオル代として、5,000円」のように記録します。ただし、出金伝票の多用は税務調査で指摘されるリスクもあるため、あくまで最終手段と考え、日頃から領収書をきちんと保管する習慣をつけましょう。
4.2 経費にできるものとできないものの判断基準
サロン経営における経費の判断基準は、「その支出が事業の売上を上げるために直接的に必要であったか」という点です。この基準に沿って、経費にできるものとできないものの具体例を見ていきましょう。
4.2.1 経費にできるものの例
サロン経営に直接関連する費用は、経費として計上できます。
- 消耗品費:シャンプー、カラー剤、トリートメント、タオル、コットン、お客様用のドリンクなど
- 広告宣伝費:ポータルサイト掲載料(ホットペッパービューティーなど)、チラシ作成費、ウェブサイト維持費、SNS広告費
- 水道光熱費・通信費:店舗の電気・ガス・水道代、インターネット料金、電話代
- 地代家賃:店舗の家賃、駐車場代
- 研修費・新聞図書費:技術向上のためのセミナー参加費、美容業界の専門誌や経営に関する書籍の購入費
4.2.2 経費にできないものの例
事業とは直接関係のない、個人的な支出は経費にできません。
- 事業主個人の生活費:プライベートな食事代、衣料品代、医療費など
- 税金:所得税、住民税、国民健康保険料など
- 事業に関係ない交際費:家族や友人との飲食代
4.2.3 判断に注意が必要なもの(家事按分)
自宅兼サロンの場合など、プライベートと事業の両方に関わる支出は「家事按分(かじあんぶん)」という考え方で経費を計算します。これは、支出全体のうち事業で使用した割合分だけを経費として計上する方法です。例えば、家賃や水道光熱費、通信費などを、事業で使用している床面積や時間などの合理的な基準で按分します。
5. まとめ
本記事では、サロンオーナーが年末までに完了させておくべき経理業務と、年明けの確定申告をスムーズに進めるための準備について解説しました。年末は繁忙期で後回しにしがちですが、この時期の経理業務は、正確な確定申告を期限内に行い、来期の健全なサロン経営の土台を築くために非常に重要です。
ご紹介した「年末までやらないといけない経理業務7選」のチェックリストを活用し、1年間の売上と経費の確認、領収書の整理、在庫の棚卸などを計画的に進めましょう。年末の時点で事業の状況を正確に把握することは、適切な節税対策を検討する最後のチャンスにも繋がります。
もし経理業務に不安や負担を感じる場合は、会計ソフトを導入して作業を効率化したり、専門家である税理士に相談したりすることも有効な選択肢です。年末のやるべきことを着実にこなし、スッキリした気持ちで新年を迎え、来年もお客様に最高のサービスを提供することに集中しましょう。





