【美容師向け】所得税の予定納税とは?対象者から計算方法、減額申請まで徹底解説

6月ごろ、税務署から「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」が届いて驚くフリーランス・個人事業主の美容師さんも多いでしょう。予定納税は、前年分の所得金額や税額などを基に計算した「予定納税基準額」が15万円以上となる人について、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納める制度です。罰金や追徴課税ではなく、あくまで前払いであり、最終的には翌年の確定申告で精算します。

この記事では、美容師さん向けに、予定納税の対象者、納付額の考え方、所得が減ったときの減額申請、翌年の確定申告での精算方法、そして日頃から意識したい節税・資金繰りのポイントまで、実務に沿ってわかりやすく解説します。

目次

1. 6月ごろに届く「所得税の予定納税のお知らせ」とは?

1-1. 突然の通知に驚かないで。予定納税は「前払い」の制度

予定納税とは、その年の5月15日現在で確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した予定納税基準額が一定以上の人について、その年の税額の一部を7月と11月に前払いする制度です。税務署長は、予定納税額を6月15日までに、書面またはe-Taxによる通知で知らせることになっています。実務上は、6月中旬ごろに通知が届くケースが一般的です。

この制度は、翌年の確定申告で一度に大きな税額を納める負担を和らげるとともに、国の歳入を平準化する目的で設けられています。したがって、通知書が届いても「新しく税金が増えた」のではなく、「来年納める税金の一部を先に払う」という理解で問題ありません。

1-2. 通知書が届く美容師さんの条件

予定納税の対象となるのは、予定納税基準額が15万円以上の人です。ここで注意したいのは、「前年の所得税額が15万円以上なら必ず対象」とは言い切れないことです。原則として前年分の申告納税額が基準になりますが、前年に分離課税の所得がある場合や、一定の控除・特例の適用状況によっては、単純に前年の所得税額と一致しないことがあります。

そのため、美容師さん向けの記事では、「前年の所得税額が15万円以上」ではなく、「予定納税基準額が15万円以上」と説明するのが正確です。前年に売上や利益が伸びて、確定申告で納める税額が大きかった方は、翌年に初めて通知書が届くことがあります。

1-3. 令和7年度税制改正との関係

令和7年度税制改正では、基礎控除の引上げや特定親族特別控除の創設などがありましたが、国税庁は、これらは予定納税額や減額申請時の申告納税見積額の計算上は考慮されないと案内しています。これらの改正は、翌年の確定申告で最終税額を計算するときに反映されるため、予定納税の通知額が自動的に下がるわけではありません。

2. 7月(第1期分)までにやるべきこと

2-1. まず、自分の予定納税額を確認する

通知書には通常、第1期分と第2期分の予定納税額が記載されています。予定納税額は、原則として予定納税基準額の3分の1を第1期分、さらに3分の1を第2期分として納めます。したがって、各期の金額は「年間の納税予定額の3分の1」ではなく、「予定納税基準額の3分の1」と説明するのが正確です。第1期分の納期は7月1日から7月31日までです。

2-2. 納付方法を決めて準備する

予定納税の納付方法は複数あります。主な方法としては、振替納税、ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)、インターネットバンキング等、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付、金融機関や税務署窓口での納付があります。自宅やサロンから手続しやすい方法を選ぶとよいでしょう。

特にコンビニ納付は、バーコード付納付書で納める方法と、国税庁ホームページなどで作成したQRコードを使って納める方法が別になっています。いずれもコンビニでは現金納付で、QRコード方式は30万円以下の納付に対応しています。

また、最近はキャッシュレス納付の利用状況などに応じて、納付書が事前送付されない方もいます。 そのため、元原稿のように「通知書に納付書が同封されている」と決め打ちしない方が安全です。納付書が届いていない場合は、e-TaxやQRコード納付、振替納税などの方法を確認しましょう。

2-3. もし所得が減るなら、減額申請を検討する

「前年より今年の売上がかなり下がりそう」「休業で利益が大きく減りそう」という場合には、予定納税額の減額申請ができる可能性があります。減額申請は、その年の状況から見積もった申告納税見積額が、もともとの予定納税基準額より少なくなると見込まれる場合に行う手続です。

美容師さんであれば、たとえば次のようなケースが考えられます。

  • 売上不振や客数減少で、前年より所得が大きく減る見込みの場合。
  • 病気・けが・出産・育児などによる休業や、事業の縮小・廃業を予定している場合。
  • 災害・盗難・横領などで、事業用資産に損害を受けた場合。
  • 医療費控除や扶養控除などの増加で、その年の税額が下がる見込みが明らかな場合。

2-3-1. 減額申請の提出期限

第1期分と第2期分をまとめて減額申請する場合の提出期間は、原則として7月1日から7月15日までです。

第2期分のみ減額申請する場合は、原則として11月1日から11月15日までです。なお、実際の年によっては土日祝日の関係で期限が翌開庁日にずれることがあります。たとえば令和7年分の第2期分は、国税庁の案内上、11月17日が期限でした。

2-3-2. 減額申請書の書き方と提出方法

減額申請書には、売上の見積額、必要経費の見積額、所得控除額、税額控除額などを記入し、申告納税見積額を算定します。理由欄には、単に「売上減少」と書くだけでなく、いつから、どの程度、何が原因で減る見込みなのかを具体的に書くことが大切です。提出は税務署への書面提出のほか、e-Taxでも可能です。

なお、令和7年度税制改正による基礎控除の引上げや特定親族特別控除の創設は、減額申請時の申告納税見積額の計算でも考慮されません。 この点は誤解しやすいので、記事内で触れておくと親切です。

3. 11月(第2期分)の予定納税と注意点

3-1. 第2期分の納付も忘れずに

第2期分の納期は、原則として11月1日から11月30日までです。元原稿のように「第2期分の納付書は6月に届いた通知書に同封されている」と断定するのは、現在の取扱いではやや不正確です。前述のとおり、納付書が事前送付されない方もいるため、通知方法や納付方法は自分の利用状況に応じて確認した方が安全です。

年末は材料費や交際費などで資金繰りが厳しくなりやすいため、第2期分まで見越して、夏の段階から資金を分けて管理しておくと安心です。

3-2. 予定納税を支払えなかった場合のリスク

予定納税を期限までに納めなかった場合、延滞税がかかります。ここで重要なのは、元原稿のように一律で「11月30日の翌日から」と書くのではなく、各期の法定納期限の翌日から納付日までが対象になる点です。つまり、第1期分なら7月末の翌日から、第2期分なら11月末の翌日からが原則です。

納付が難しい場合でも、放置すると負担が増えるおそれがあります。資金繰りが厳しい場合は、早めに税務署へ相談することが大切です。

4. 翌年2月〜3月の確定申告で最終調整

4-1. 確定申告書に予定納税額を記入する

所得税及び復興特別所得税の確定申告期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。予定納税がある人は、確定申告書の「予定納税額」欄に金額を記入します。

このときのポイントは、「実際にいくら支払ったか」ではなく、「税務署から通知を受けた予定納税額」を記入することです。国税庁は、実際に納めたかどうかにかかわらず、第1期分と第2期分の合計額(通知書の合計欄の金額)を入力すると案内しています。減額申請が認められた場合は、承認後の金額で申告します。

4-2. 年間の所得税額と予定納税額を精算する

予定納税は前払いにすぎないため、最終的には確定申告でその年の税額を計算し、予定納税額との過不足を精算します。イメージとしては、

年間の所得税及び復興特別所得税額 - 予定納税額 = 確定申告で納付または還付される税額

となります。前年より利益が減ったり、控除が増えたりすれば還付になることがありますし、逆に利益が増えれば追加納付になることもあります。

5. 美容師が知っておきたい予定納税の節税ポイント

5-1. 経費を漏れなく計上しつつ、入れすぎない

予定納税の負担を抑えるには、まず前年の確定申告を正確に行うことが重要です。美容師さんであれば、薬剤や店販仕入、シザー・ドライヤーなどの器具、広告宣伝費、予約サイト利用料、研修費、通信費、サロン家賃など、事業に直接必要な支出は必要経費になり得ます。もっとも、金額や資産の性質によっては、すぐに全額経費ではなく減価償却になるものもあるため注意が必要です。

一方で、家事上の費用は必要経費になりません。 自宅兼サロンの家賃、水道光熱費、通信費などの家事関連費は、取引記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限って必要経費になります。元原稿のように、衣服代を広く経費例として挙げるのは危険です。事業専用の制服等で私用分と明確に区分できる場合を除き、衣服代の経費計上は確認が必要です。

5-2. 所得控除を最大限に活用する

所得税では、必要経費だけでなく所得控除の活用も重要です。個人事業主の美容師さんが活用しやすいものとして、iDeCoや小規模企業共済の掛金にかかる小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除などがあります。特に、iDeCoや小規模企業共済の掛金は全額が所得控除となるため、節税と将来の備えを両立しやすい制度です。

これらの控除は、自動で適用されるわけではなく、確定申告で自分で申告する必要があります。 控除証明書の保管や、年末時点での掛金・保険料の確認を習慣化しておくと、結果として翌年の予定納税負担の見通しも立てやすくなります。

6. まとめ

所得税の予定納税は、前年分を基に計算された税額の一部を前払いする制度であり、決して追徴課税ではありません。対象かどうかは、単純に前年の所得税額だけで判断するのではなく、予定納税基準額が15万円以上かどうかで決まります。納期は原則として第1期分が7月、第2期分が11月で、所得が大きく減る見込みがある場合には減額申請も可能です。最終的には翌年の確定申告で精算されるため、通知書の保管、経費と控除の整理、そして納税資金の確保を計画的に行うことが大切です。

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この記事を書いた人

美容室のミカタのアバター 美容室のミカタ 美容室の支援実績が豊富な税理士・社労士・弁護士

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