美容師の個人事業主は必見!特別な税金「個人事業税」で損しないための全知識【290万円控除とは?】

個人事業主の美容師として独立したものの、所得税や住民税以外に「個人事業税」という税金がかかる場合があることをご存じですか?本記事では、美容師が個人事業税で損しないために知っておくべき全知識を、計算方法から節税策までわかりやすく解説します。結論として、年間の事業所得が290万円以下であれば個人事業税はかかりません。この記事を読めば、納税の仕組みと290万円控除の意味が具体的に理解でき、税金の不安を解消して本業に集中できるようになります。
1. 独立した美容師を待つ「個人事業税」という特別な税金
晴れて独立し、個人事業主となった美容師のあなた。所得税や住民税のことはもちろんご存知かと思いますが、実はもう一つ、特定の条件を満たすと課税される「個人事業税」という税金があるのをご存知でしょうか。これは、すべての個人事業主が納めるわけではない、いわば「特別な税金」です。しかし、美容師の仕事は個人事業税の課税対象と定められています。知らずにいると、ある日突然納税通知書が届いて慌ててしまうかもしれません。まずは、この個人事業税がどのような税金なのか、基本からしっかりと押さえていきましょう。

1.1 個人事業主になると増える税金の種類
個人事業主として事業を行うと、主に次のような税金を納めることになります。会社員時代とは納税の仕組みが大きく変わるため、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。個人事業税は、これらの税金に加えて発生する可能性があるものです。
- 所得税(国税):1年間の所得に対して課される国の税金。確定申告で税額を計算し納付します。
- 住民税(地方税):お住まいの都道府県・市区町村に納める税金。確定申告の情報を基に税額が計算され、通知が届きます。
- 消費税(国税・地方税):原則として、2年前の課税売上高が1,000万円を超えた場合に納税義務が発生します。
- 個人事業税(地方税):事業所得が一定額(290万円)を超えた場合に、事業所のある都道府県に納める税金です。
このように、個人事業税は所得税や住民税とは別に、特定の事業を行う個人事業主に対して課される地方税の一種なのです。
1.2 個人事業税は事業を行う場所の都道府県へ納付する
個人事業税の大きな特徴は、納税先が国や市区町村ではなく「都道府県」である点です。具体的には、あなたがお店や事業所を構えている場所を管轄する都道府県に対して納付します。例えば、住民票は東京都にあっても、美容室が神奈川県にあれば、納税先は神奈川県となります。
「自分で申告が必要なの?」と不安に思うかもしれませんが、ご安心ください。毎年行う確定申告(または住民税の申告)をきちんと済ませていれば、その申告内容が税務署から都道府県の税事務所へ共有されます。その情報をもとに税額が計算され、納税義務がある人には夏ごろに納税通知書が送られてくる仕組みになっています。
2. 【STEP1 開業~確定申告】個人事業税の準備はいつから?
「個人事業税の準備はいつから始めればいいの?」と疑問に思うかもしれませんが、特別な準備は開業後すぐの「手続き」と毎年の「確定申告」に集約されます。個人事業税のためだけに特別な申告を毎年行うわけではありません。所得税の確定申告が、そのまま個人事業税の計算にも活用される仕組みを理解することが最初のステップです。

2.1 開業届の提出と確定申告の準備
美容師として独立し、個人事業主になったら、まずは税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる開業届)」を提出します。これは所得税に関する手続きですが、これと並行して、事業所の所在地を管轄する都道府県税事務所へ「事業開始(廃止)等申告書」を提出しましょう。この申告が、都道府県に「ここで事業を始めました」と知らせる合図となり、個人事業税の手続きが始まります。提出期限は都道府県によって異なりますが、事業開始から1ヶ月以内が一般的です。この2つの書類を提出することが、個人事業税の準備の第一歩となります。
2.2 確定申告書の内容が個人事業税の計算に使われる
個人事業税の税額は、あなたが税務署に提出した所得税の確定申告書の内容に基づいて計算されます。具体的には、確定申告書の「事業所得」の金額が税務署から都道府県へ共有され、その情報を元に都道府県が個人事業税を算出するのです。そのため、個人事業税のための特別な申告書を毎年提出する必要は原則ありません。つまり、毎年2月16日から3月15日に行う所得税の確定申告を正確に行うことが、そのまま適切な個人事業税の納税に繋がる最も重要な準備と言えます。
2.3 美容師はなぜ個人事業税の対象になるのか
個人事業税は、すべての個人事業主にかかるわけではなく、地方税法で定められた「法定業種」に該当する場合のみ課税されます。法定業種は70種類あり、美容師の仕事である「美容業」は、この法定業種のうち「第1種事業」に明確に分類されています。したがって、美容師として独立開業することは、法律上、個人事業税の課税対象となる事業を始めることを意味します。これは個人の選択ではなく、事業内容によって決まるルールなのです。
3. 【STEP2 税額計算】あなたの個人事業税はいくらになる?
独立した美容師のあなたが納める個人事業税は、一体いくらになるのでしょうか。実は、その計算は確定申告の数字がもとになっており、意外とシンプルです。この章では、ご自身の税額を把握するための計算方法と、重要なポイントである「290万円」の意味を分かりやすく解説します。

3.1 運命の分かれ道「事業所得290万円」の壁
個人事業税の計算において、最も重要な数字が「事業所得290万円」です。これは「事業主控除」という控除額で、いわば個人事業税がかかるかどうかのボーダーラインとなります。
結論から言うと、年間の事業所得が290万円以下の場合、個人事業税は課税されず、支払う税額は0円になります。まずはご自身の確定申告書を確認し、事業所得がこの「290万円の壁」を超えているかどうかをチェックしてみましょう。
3.2 個人事業税のキホンとなる事業主控除290万円を理解する
個人事業税の計算式は次のようになります。
(所得金額 - 事業主控除290万円) × 税率 = 個人事業税額
この計算式に出てくる「事業主控除」とは、個人事業主の生活費などを考慮し、事業所得から一律で差し引くことができる控除のことです。この控除額が年間290万円と定められており、特別な手続きをしなくてもすべての事業主に適用されます。
ここで注意すべきなのが、計算の基礎となる「所得金額」です。これは、所得税の確定申告で用いる「青色申告特別控除(最大65万円など)」を差し引く前の金額です。所得税の計算とは異なり、個人事業税の計算では青色申告特別控除は適用されないという点を必ず覚えておきましょう。
3.3 美容師の個人事業税の計算例を見てみよう
それでは、具体的な数字を使って美容師の個人事業税をシミュレーションしてみましょう。美容業は法律で定められた第3種事業にあたり、税率は5%です。
3.3.1 ケース1:事業所得が290万円以下の場合
年間の売上が700万円、必要経費が450万円だったとします。
- 事業所得:700万円(売上)- 450万円(経費)= 250万円
この場合、事業所得250万円は事業主控除290万円を下回っているため、個人事業税の課税対象とはなりません。したがって、納める税金は0円です。
3.3.2 ケース2:事業所得が290万円を超える場合
年間の売上が900万円、必要経費が400万円だったとします。
- 事業所得:900万円(売上)- 400万円(経費)= 500万円
事業所得500万円は事業主控除290万円を超えているため、個人事業税が課税されます。税額は以下の通りです。
(500万円 - 290万円)× 税率5% = 10万5,000円
このケースでは、年間の個人事業税額は10万5,000円となります。この金額が、夏ごろに届く納税通知書に記載されることになります。
4. 【STEP3 納税】納税通知書が届いてから納付まで
確定申告を無事に終えても、個人事業主の税金は終わりではありません。ここからは、算出された個人事業税を実際に納付するステップです。ある日突然、納税通知書が届いて慌てることがないよう、いつ、どのように手続きを進めるのかを正確に把握しておきましょう。

4.1 夏ごろに都道府県から届く納税通知書
個人事業税の納税通知書は、毎年8月上旬から中旬ごろに、事業所の所在地を管轄する都道府県税事務所から郵送されてきます。これは、3月に提出した確定申告書の内容をもとに、都道府県が税額を計算して送付するものです。
通知書が届いたら、まず以下の内容を確認しましょう。
- 納税額
- 納付期限(第1期分・第2期分)
- 所得金額や控除額などの計算内訳
もし記載されている計算内容に疑問や不明な点がある場合は、納税通知書に記載されている問い合わせ先の都道府県税事務所へ速やかに連絡してください。
4.2 納付期限と支払い方法一覧
個人事業税の納付は、原則として年2回に分割して行います。第1期の納付期限が8月末、第2期の納付期限が11月末に設定されているのが一般的です。ただし、年間の納税額が1万円以下の場合は、8月の第1期に一括で全額を納付する必要があります。
納付期限を過ぎてしまうと、延滞税が課される可能性があるため、必ず期限内に手続きを済ませましょう。主な支払い方法は以下の通りですが、自治体によって対応状況が異なります。
- 金融機関の窓口での支払い
- コンビニエンスストアでの支払い(納付書にバーコードがある場合)
- 口座振替(事前の申し込み手続きが必要)
- クレジットカード決済(別途システム利用料がかかる場合があります)
- スマートフォン決済アプリ(PayPay、LINE Payなど)
- ペイジー(Pay-easy)を利用したATMやインターネットバンキングでの支払い
利用できる支払い方法は、お住まいの都道府県のウェブサイトや、送付されてくる納税通知書で必ず確認してください。ご自身のライフスタイルに合った便利な方法を選び、計画的に納付を済ませましょう。
5. 【STEP4 節税】来年の個人事業税を安くするために今できること
個人事業税は、課税対象となる「事業所得」をもとに計算されます。つまり、この事業所得を合法的に抑えることが、個人事業税の節税に直結します。ここでは、独立した美容師が来年の納税額を減らすために、今から取り組める具体的な方法を2つ解説します。

5.1 節税の基本は青色申告と経費管理(※個人事業税では青色申告特別控除は使えません)
最重要ポイント:個人事業税の計算では、青色申告特別控除は“加算”され、節税効果はありません。
都道府県の公式式は、概ね
(所得金額 ± 専従者給与の調整 + 青色申告特別控除 - 各種控除(繰越損失等)- 事業主控除290万円)× 税率
となります。したがって、「青色申告特別控除で290万円以下に下げれば非課税」という考え方は誤りです。
個人事業税を抑える基本施策(実務)
・必要経費の適正計上
収入獲得に要した費用を漏れなく経費化。家事按分は合理的基準(使用面積・時間等)で区分し、記録を残す。
・事業専従者給与の活用
青色申告なら専従者への給与は原則全額を必要経費(要件・届出・相当額)。白色は配偶者86万円、その他50万円が上限。
・繰越控除(赤字・譲渡損等)の活用
青色申告者は、純損失や事業用資産の譲渡損失を個人事業税でも控除対象(通常3年、特例延長あり)。翌年以降の課税標準を圧縮できます。
注意:事業主控除は原則290万円(年途中は月割・端数1か月切上げ)。この控除後の課税標準が0円以下で非課税となります。
美容師の事業には、シザーやコームなどの道具代、シャンプーやカラー剤などの材料費、最新技術を学ぶためのセミナー参加費、集客のための広告宣伝費、店舗の家賃水道光熱費など、多くの経費が発生します。これらの事業に必要な支出を「必要経費」として漏れなく計上することが、所得を適正に圧縮し、結果的に個人事業税を抑えることにつながります。日頃から領収書やレシートを整理し、会計ソフトなどを活用して正確に記録する習慣をつけましょう。
5.2 支払った個人事業税は支払った年の経費に計上できる
見落としがちですが、非常に重要な節税テクニックがあります。それは、支払った個人事業税そのものを、支払った年の経費として計上することです。
所得税や住民税は経費にできませんが、個人事業税は事業を運営するために必要なコストと見なされるため、経費計上が認められています。具体的には、今年支払った個人事業税の全額を、翌年の確定申告で「租税公課」という勘定科目で必要経費として計上します。
例えば、2024年の8月と11月に納付した個人事業税は、2025年に行う確定申告(2024年分の所得に対する申告)の経費となります。これにより翌年の事業所得が減り、その結果として翌年の所得税・住民税、そして翌々年に課税される個人事業税の負担を軽減する効果が期待できます。納税通知書は支払いの証明として、また経費計上のための記録として大切に保管しておきましょう。
6. 押さえておきたい個人事業税の注意点
個人事業税の基本的な計算方法や納税の流れを理解したら、次に知っておきたいのが少し特殊なケースです。ここでは、事業が赤字になった場合や、年の途中で開業・廃業した場合の取り扱いについて、いざという時に慌てないための知識を解説します。

6.1 赤字だった場合の繰越控除制度
事業を始めたばかりの時期など、思うように売上が伸びず所得が赤字になってしまうこともあります。事業所得が赤字の場合、個人事業税は課税されません。
さらに、青色申告を行っている美容師の方であれば、その年の赤字(純損失)を翌年以降最大3年間にわたって繰り越すことができます。これを「純損失の繰越控除」といいます。この制度を利用することで、翌年以降に黒字が出た場合でも、繰り越した赤字と相殺して所得を圧縮し、結果的に個人事業税の負担を軽減できる可能性があります。この適用を受けるためには、確定申告の際に損失申告の手続きを忘れずに行うことが重要です。
6.2 年の途中で開業や廃業をした場合の計算
個人事業税の計算で基礎となる290万円の事業主控除は、1年間事業を行ったことを前提とした金額です。そのため、年の途中で開業したり、廃業したりした場合は、事業を行っていた月数に応じて控除額が調整されます。
具体的な計算は「月割り」で行われます。例えば、10月1日に開業した場合、その年の事業月数は3ヶ月(10月、11月、12月)です。この場合の事業主控除額は「290万円 × 3ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 72.5万円」となります。事業期間が1年に満たない場合は、事業主控除額が満額の290万円ではないという点を覚えておきましょう。なお、事業月数の計算において、1ヶ月に満たない端数は1ヶ月として扱われます。
7. まとめ
独立した美容師にとって個人事業税は避けて通れない税金です。しかし、その仕組みは明確で、事業所得が年間290万円の事業主控除額を超えない限り、課税されることはありません。この「290万円の壁」が、個人事業税を理解する上で最も重要な結論です。
納税額を抑える鍵は、日々の経費管理と青色申告の活用にあります。また、支払った個人事業税は翌年の経費として計上できるため、忘れずに処理しましょう。正しい知識を身につけ、計画的な納税と節税を行うことが、安定したサロン経営につながります。




